昔から「葛と言えば吉野、吉野と言えば葛」と言われてきました。。
その葛の名産地、奈良県吉野山で、賞味期限わずか10分という吉野本葛の葛餅、葛きりを堪能してきました。
目の前で葛の調理をしながら、葛についてのうんちくを聞かせてもらい、その場で出来立てをいただく。
いままで味わったことのない、上品で雑味のないまろやかな甘さ、まさに絶品!
「なぜ吉野の本葛はそんなにおいしいのか?」をお伝えします。
世界遺産、奈良県吉野山を散策
奈良県の中央部、吉野郡吉野町にある吉野山。
2004年には吉野山・高野山から熊野にかけての霊場と参詣道が『紀伊山地の霊場と参詣道』としてユネスコの世界遺産に登録。
桜の名所として有名だけれど、開花前の時期だったので観光客は少ない。
山沿いの古い街道は狭く、場所によっては車がやっと1台通れる程度。
行き交う車同士で道を譲りあいながら街道をのぼり、金峰山寺から少し上がったところにある有料駐車場へ車を停めて散策開始。
ゆったりと時間が流れる感じの落ち着いた雰囲気の街道です。
眼下に広がる山々の緑も素晴らしく、それらを見ているだけで気持ちがリフレッシュされていっきます。
曲がりくねった街道を歩いて下りながら、左右に並ぶお店を見て回ると、一目で気が付くのは圧倒的な数の「葛」(葛菓子、葛餅、葛きり)と「柿の葉寿司」の看板群。
この地の一推しがわかる非常にわかりやすいプレゼンテーションで、私も当然「特産品の葛を絶対食べねば!」と心に決め、お店選びを開始します。
奈良県吉野山「中井春風堂」
街道を歩いていると、店頭に並んだお客さんを前になにやらしゃべりながら葛の調理をしているお店が目にはいります。
ここは街道の上側、金峰山寺のすぐそばにある中井春風堂さん。
面白そうなので、少し寄って聞き耳をたてていると、どうやら葛のこと、調理のことなどを話している。
店内にいたお店の方に聞いてみると、なんでも店内飲食のために葛餅や葛切りを注文すると、店主の方が30分タップリかけ、葛のことを教えながら目の前で実演調理をしてくれるそう。
「こういうお店の葛は味も間違いなさそうだ」と葛餅、葛きりを一つづつ注文、実演調理&葛講習会を見ることになりました。
※狭いスペースなので一回毎に4~5人程度が参加可能。お店で自分たちの実演調理の時間を予約(確認)してから参加することになります。今回はすぐに次の回の予約が取れました。
中井春風堂|吉野葛 吉野葛菓子 吉野本葛 吉野山蔵王堂前 (nakasyun.com)
奈良県吉野山「中井春風堂」で葛のことを学ぶ
葛について教えてもらうのは勿論初めてなので、全ての情報が新鮮です。
まず「葛が何か知ってますか?」と始まる。
そう言われてみれば、葛がそもそもどんな形をしているのか知らないし、植物ということを知っているくらいで、全く見当もつかない。
すると店主が、高速道路沿いに密生している蔦状の植物の写真パネルを見せてくれる。
「何、これが葛?」
そうなんです、これが葛らしいのです。この葛の根を使うらしいんです。
日本全国場所を問わずに生えているそう、確かに良く見る姿に最初は「こんなにそこらじゅうにある蔦だったら安く手に入りそうだし、あんまり有難みもなくなっちゃうよねー」と思った私。
ところがどっこい、「葛」で作られた食べ物の有難みを知らされます。
葛の根から採取する葛粉の製法は大変な手間なんです。
葛根を砕いて、真水で洗ってでんぷん質を沈ませ、上水を取り除いてまた真水で洗い沈める。これを何度も繰り返して純白な葛粉にしていく。
だから葛が高速道路沿いに群生していようが、家の周りにもあろうが、葛製品は貴重なんです。
吉野葛はさらに、そのブランドに恥じない、吉野葛を守るための厳しいルールが存在するそうです。
実は我々が「葛」と一言で呼んでいるものにも、色々な種類・品質のものがあるそう。
奈良県吉野では葛100%のものが「吉野本葛」、葛粉にサツマイモなどのでんぷんを混ぜたもの(ただし葛の含有率は50%以上)が「吉野葛」と呼ばれているそう。
地域によっては吉野で「葛」と呼べないような、葛の含有率が50%を割っているものもあるそう。
店主のその力の入った説明には、吉野葛ブランドに対する強い誇りを感じます。
そんな説明をしながら、目の前で葛粉を水で溶き、吉野本葛(葛100%)の葛餅、葛きりに仕上げていく、という工程を見せていただけます。
そこには「なぜ賞味期限が10分なのか?」が、すごくわかり易く目の前に展開します。
秘密は葛粉と水の相性、そして熱。
普通の状態では葛粉と水は混じりあわない。
これに熱を加えると混じりあい、白い葛粉がだんだん透明になっていく。
逆に時間がたつとともに、温度が下がれば葛と水が分離しだし、そして白濁化。
だから、この目の前にある状態の葛粉、葛もちは10分間しかもたないのです。
ちなみに普通に我々が食べているものが「賞味期限10分間」でないのは、葛粉と水分の結合状態を保つために他の物を混ぜてつなぎとしているから(混ぜ物が入ると当然雑味になる)。
葛100%の吉野本葛だからこその「賞味期限10分」の葛切り、逆に言えば「賞味期限が10分を超える本葛の葛切り」は世の中に存在しないのです。
奈良県吉野山「中井春風堂」の吉野本葛の絶品!葛餅、葛きりをいただく
30分間たっぷりと講義と実演調理を見せていただき、できあがった葛をいただきます。
葛を「葛きり」「葛餅」に仕立て上げてもらって、店奥にある喫茶エリアでいざ実食。
「葛きりには黒蜜」「葛餅には黒蜜ときな粉をお好みで」との店員さんのアドバイス通りに食べ始めます。
ほんのりまだ暖かい、まだ透明感のある葛餅、葛きりが…う、う、美味い!!!
ほんのりとまろやかで、雑味の全くない上品な葛自身の甘さが感じられ、これに甘すぎないこれまた上品な黒蜜の甘味が重なって、まさに絶品!
葛餅にはきな粉も一緒に使いながら食べてみる、これもまた美味。
要は全部おいしいのだけれど、私のベストチョイスはズバリ「葛きり」!
「吉野本葛」自体のなんとも言えない柔らかい甘味がよりストレートに感じられる「葛きり」、是非一度は味わってもらいたい逸品です。
【後日談】その後別の機会に普通の葛きり(白いもの)を食べてみました。日持ち用の“つなぎ”の雑味のせいなんでしょうか?吉野本葛をで味わった葛そのものの味でなく味の差は歴然!
吉野本葛を身近で気軽に食べられる訳ではないので「正直、困ったもんだ」と思っている今日この頃です。これからも「普通」の葛きりを食べ続けるのであれば、もしかしたら「吉野本葛の葛切りは食べてはいけない!」ということなのかも知れません(笑)。
正直、今まで葛餅、葛きりは過去のもの(ずいぶん昔の年代の人たちが好んだもの)だと思っていましたが、今回「吉野本葛」のおいしさにまさに目からうろこ!
たまたま行った吉野山で「吉野本葛」を食べれたのは思いがけない幸運でした。
また吉野山に行く機会があったら、絶対にまた「吉野本葛」の葛きりをいただきます!
みなさんも近くにお寄りの際にはぜひお試しを!
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