バイデン大統領が初来日。
皇居での天皇陛下との面談に続いて、岸田首相との首脳会談は迎賓館赤坂離宮で行われます。
迎賓館赤坂離宮が年間を通して一般公開される様になって6年、バイデン大統領来日直前に迎賓館に行ってきました。
国宝である迎賓館赤坂離宮の豪華で優雅な建築と工芸、その魅力をお伝えします。
国宝 迎賓館赤坂離宮の歴史
東京の元赤坂にある迎賓館赤坂離宮は、東宮御所(皇太子の御所という意味合い)として1909年(明治42年)に建設された日本唯一のネオ・バロック様式の西洋宮殿。
宮廷建築家片山東熊の設計。
ただし生活する上での使い勝手はあまり良くなかったらしく、皇太子嘉仁親王(後の大正天皇)がこの御所を使用することはほとんどなかった。
嘉仁親王が大正天皇に即位した後は離宮として扱われることとなり、その名称も赤坂離宮と改められました。
その後、「旧赤坂離宮を改修し、これを外国賓客に対する迎賓施設に供する」ことが、1967年(昭和42年)に決定、5年の歳月をかけて1974年(昭和49年)3月に現在の迎賓館が完成。
2009年(平成21年)12月8日、旧東宮御所(迎賓館赤坂離宮)として国宝指定。
明治以降の文化財としては初の国宝となりました。
国宝 迎賓館赤坂離宮を見学する
2016年(平成28年)4月から一年を通して一般公開されることになりました。
国賓来日等で使用される場合(今回もバイデン大統領来日期間中は前後含めて一般公開はされない)を除いて見学することが出来ます。
いままでは滅多に見れなかった貴重な国宝の内部が普通に見れる様になったことはありがたい限り。
今回は東京に行った機会に見学させてもらうことに。
写真撮影は庭園や外部からはOK、内部での写真撮影は禁止(VIP応接用に使う施設など、セキュリティー上おおっぴらに出来ない部分もあるものと推察)。
【入館料】
本館・庭園 一般:1,500円、大学生:1,000円、中高生:500円、小学生以下:無料
和風別館・本館・庭園 一般:2,000円、大学生:1,500円、中高生:700円https://www.geihinkan.go.jp/akasaka/
京都の宮内庁管轄の離宮見学は無料のところが多く、料金がそこそこ掛かることに少し意外でしたが、「この場所と入場者の数では管理費も京都以上にかかるんだろうな。」と思った次第。
迎賓館赤坂離宮では丁寧で深い説明を受けられる
入館後に順路に沿って館内を回っていきます。
各部屋には何人かの係りの方がいて、必ずその部屋にあるものについてかなり高度で専門的な知識(しかもかなり深い)を持った年配の方が居らして、どんな質問にも丁寧に答えてくれる。
推察するに宮内庁や公的機関で学問・研究に携われていた方もいらっしゃるのでは?
そう思えるほどの知識の深さと建物や日本文化への愛情を感じます。
・「迎賓館の全体のデザイン、各部屋の意匠などは日本人が全て考えた」
・「西洋から取り寄せたものもあるがアイデアは全て日本人発」
・「鹿鳴館で日本は西洋化文化に追いつこうとしたが、マナーも覚えず外見を取り繕っただけの真似事で、西洋からは馬鹿にされていた」
・「この鹿鳴館での失敗をこの迎賓館で取り返した。」
などと、面白いエピソードがポンポンでてきます。
学校の歴史で学んだ有名な鹿鳴館が「西洋の真似事で、西洋から馬鹿にされていた」などという話は興味深く聞いてしまいます。
また西洋文化に完全に飲み込まれないように、必死に日本らしさ、日本文化を残そうとした当時の日本人の様子が、説明員の皆さんの説明を通して感じられてきます。
迎賓館赤坂離宮の見事な建築と工芸
正面玄関の屋根飾り、内装の模様などに鎧武者の意匠があるなど、西洋の宮殿建築に日本風の意匠が混じった装飾。
各部屋とも洋をメインに、しかししっかり和の要素が取り入れられています。
明治時代の「西洋化・近代化への取組み」、一方であった「日本文化への誇り」がこの迎賓館では建物の造形・装飾という形で融合され、表現されているのが面白い。
明治時代の人たちの息づかいが聞こえてくる様です。
建築物、造形物、装飾、どれを見てみても非常に丁寧で手の込んだ造りは、いまではなかなか見られません。
当時のこの建築物に対する入れ込み方の凄さがヒシヒシと伝わってくる。
各部屋のシャンデリアは超巨大で重く(800kgのものも)見事なもの。
重量を言われてもピンと来ませんが、少なくとも私が見た中では最大級。
当時の日本にはまだそこまでの重量物を支える鉄材の製造技術はなかったとのことで、製造は欧州、支える鉄材は米国で調達。
しかしこの西洋風のシャンデリアもデザイン案は日本側が出したそう。
また電気が珍しかった建築当時の日本で、イギリス製の自家発電装置を備え付け、館内の照明に電気を使っているのも当時の最先端でした。
迎賓館赤坂離宮の豪奢な部屋の数々
彩鸞(さいらん)の間
左右の大きな鏡の上と、大理石で作られた暖炉の両脇に、「鸞」と呼ばれる架空の鳥をデザインした金色の浮き彫りがあることに由来しています。
白い天井と壁は金箔が施された石膏の浮き彫りで装飾され、壁面の10枚の鏡が部屋を広く見せています。
この部屋は、表敬訪問のために訪れた来客が最初に案内される控えの間として使用されたり、晩餐会招待客の国・公賓との謁見や条約・協定の調印式、国・公賓とのインタビュー等に使用されるとのこと。
花鳥(かちょう)の間
名称は天井に描かれた36枚の絵や、欄間に張られたゴブラン織風綴織、壁面に飾られた渡辺省亭原画・濤川惣助作の『七宝花鳥図三十額』に由来しています。
この部屋は最も日本風の雰囲気が感じられる。
渡辺省亭の鳥の原画は見事で、「鳥の絵を描かせたら日本一」という声もある。
それをさらに忠実に七宝で造り上げる濤川惣助もまた見事で、とにかく素晴らしい!
渡辺省亭、濤川惣助のこの作品群を見るだけで価値があります。
実はこの二人は、NHK Eテレ「日曜美術館」(日曜夜8時)やBS日テレ「ブラブラ美術館・博物館」(火曜夜8時)の両TV番組でほぼ同時期に取り上げられていました。
これを見ていた私はある程度の予備知識もあり、「鳥の絵を描かせたら日本一」という評価にも納得していたので、なおさら興味深くじっくりと見ることができました。
(ちなみに両番組とも美術番組といっても堅苦しくなく、美術などあまり興味のなかった私でも楽しく見れる娯楽番組でオススメです。なにしろ「ブラブラ美術館・博物館」などは出演者が「おぎやはぎ」ですから…)
またこの部屋は国・公賓主催の公式晩餐会が催される大食堂となるそうです。
朝日の間
名称は天井に描かれた「朝日を背にして女神が香車(チャリオット)を走らせている姿」の絵に由来。
天井画は長径約8m, 短径約5mの大きな楕円形。室内は古典主義様式であり、壁には京都西陣の金華山織の美術織物が張られています。
どう見ても洋風ですが、京都西陣が使われているのが”和のこだわり”ですね。
国・公賓用のサロンとして使われ、ここで表敬訪問や首脳会談などの行事が行われます。
羽衣(はごろも)の間
名称は天井に謡曲の「羽衣」を描いた大壁画があることに由来。
正面の中2階には、舞踏会場として設計されたためオーケストラボックスがある(ただし実際に舞踏会が開かれたという記録はないそう)。
迎賓館の中で最も大きいシャンデリア(部品7000個、重量800キログラム)があります。
本当に「巨大!」で、天井強度が大丈夫か心配になるほど。
しかし豪華で優雅、ほんとうに綺麗な造形物だと思います。
雨天の際に歓迎行事を行ったり、晩餐会の招待客に食前酒や食後酒が供されたりするとのこと。
国宝 迎賓館赤坂離宮を見学すべし
迎賓館赤坂離宮は、明治時代の先人の西洋に追いつき追い越そうという気概、しかし飲み込まれずに日本文化を大切にしようという熱い思いが融合し、それがそのまま形になったものと言えます。
最高に豪華で優雅な建物と造形の数々は、まさに国宝の名にふさわしいもの。
ここに来るだけで、明治以降の日本の近代化の歴史がかなり見えてくる。
おしゃべり好きの多い説明員の皆さんにより、明治の日本がどんどん明らかになってきます。
かつては普段には公開されていなかった国宝がいつでも見れる。
この貴重で見事な迎賓館赤坂離宮、是非訪問されることをおすすめします。
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